みずがらす
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【前編】小さな未亡人
※自粛していたのですが、本人からの了承と依頼により掲載を決めました。

 二週間前、妹の彼氏が突然事故死した。
 友達がバイクで彼の乗る自転車を牽引しており、スピードが出すぎてマンホールの出っ張りにつっかかり、縁石で跳ね上がり、電柱に激突してほぼ即死だったそうだ。おそらく60キロ以上は出ていたらしい。衝撃で肺が潰れていたのが死因だという。

 この日は妹と彼の、二ヶ月目の記念日直前だった。9月11日に付き合いだしたので「縁起の悪い日だね」なんて言いながらも、二ヶ月間ラブラブで過ごしていた。それが11月11日を迎えることなく、断ち切られることになったのだ。
 
 妹は12時ちょうどに「おめでとう」のメールを出したそうだ。ところが、30分経っても1時間経っても返事が来ない。怒って、「こんな大切な日にどうして返事くれないの!」というメールも出したそうだ。しかし返事はとうとう来ず、そのまま夜は過ぎ、朝が来た。
 妹は友達に愚痴を言いながら学校に行った。学校に着くと、クラスの子が泣いているのを目にする。「彼氏と別れたのかな」なんて思っていると、周りの子も次々と泣き出した。意味不明の事態に、一体何があったんだろうと彼女等を心配しながら授業の準備をする妹。
 
 朝のHRで事務的に連絡を済ます担任。ついでのように、「昨日お前らと同じ歳の高校生が事故にあったそうだ」と告げる先生。「知り合いだったヤツもいるんじゃないのか?一応名前言っといた方がいいかな?」

・・・・・・・

 何の準備も無く、妹の耳を通り過ぎるあまりにも聞きなれた名前。一瞬、夢を見てるのかと思ったらしい。教科書の一節を読むように淡々と、愛する人の名前が教師の口から出る。何故彼氏の名前がHRで呼ばれているのか、他校で自分達の関係を知るはずもない教師から何故その名前が放たれたのかがサッパリわからなくて、彼女の頭の中は真っ白になった。

 他人事のように連絡を済ませた教師と、少し気の毒がっただけで何も知らない生徒達がいつもの朝の風景に戻ろうとしている時、妹は自分でも止められないくらいの発作に襲われたそうだ。体中が震えて、呼吸の仕方が分からなくなって、突然心臓発作に見舞われた人みたいにその場に倒れてしまったらしい。何事かと振り返る級友と、全てを知っていながら妹に何も教えず黙っていた女友達の視線が集まり、妹は保健室に運ばれた。

 事情を知らない担任が保健室に来て言った言葉
(いくら知り合いだったからって大げさすぎないか?という顔で)
「治まったら二時間目早く来なさい」

 気分が悪くなり早退しようとした妹を玄関で止めた教師が言った言葉
「おい、早退はさせないぞ。ちゃんと授業出ろ」

 そして、妹は早退も許されずに二時間目から一日授業を受けさせられた。勿論何も聞いているはずがない。薄情な友達は無情な先生に事情を説明しないため、毎回の授業で泣いていた妹は先生に叱られた。

 放課後、その足で彼の家に向かった妹は、更に辛い事実に遭った。彼の親から見せてもらった彼の衣服は、(妹曰く)「服を綺麗に蛇腹折りにして鋏でズタズタに切った感じ」だったそうだ。「布をかけてあげて」と言われて彼の顔を見ると、何か感じが違うという。鼻が潰れて、耳が取れていたのだった。でも私の妹は、冷静さをいつでも保つ強い子だ。必死にそれを受け入れて、冷たくなった彼の肌を「あんなに冷たくなるんだね、人形みたいに」と言っていた。一日授業を受けさせられて、彼に直面しても、まだ自己を失わないでいたのだ。後々、「お姉ちゃんだったら多分ショック死してるね」と語った妹はやはり毅然としている。

 遺品をいくつも貰って、お通夜もお葬式も代表として何百人もの生徒の前に出た妹。悲しんでいる暇もなく、誰を恨む事も出来ない。自業自得と言われてもしょうがない事故だっただけに、運命を恨む事しかできなかったらしい。ただ彼女は、「あっという間だったから●●はきっと怖かったり痛かったりはしてないね」と言っていた。

 私は、彼に会ったことがないから、本当に正直な所は「妹を巻き込まないでくれて良かった」としか思えない。不良っぽい子だったから、バイクに妹を乗せていた時もあっただろう。そう考えると、安心したとさえ思える。

 でも、15歳で恋人を失った妹のトラウマは大きいだろう。あの時のメールは読まれなかった。もう二度と返事は来ない。彼女は後悔していた。どうしてもっと大好きでいてあげなかったんだろうって。自分の軽すぎた気持ちが、申し訳なさすぎる、って。

彼からの最期のメールは、「大好きだから、ずっとずっと一緒にいようね」という内容だった。まるでドラマだ、と妹は言っていた。最期に相応しすぎて、もうそんな内容のメール、怖くて誰からももらいたくないと。

 私も経験したことのない衝撃、それがどれほどの大きさなのかは分からないけど、話からは本当に辛かったんだろうなというのが伝わってきた。代わってあげたくても、それもいけないような気がするし。彼女以外、彼のことを一生愛していてあげられる人はいないんだもんなぁ。
 辛くても、ずっと忘れないでいてあげて欲しい。
03:24 | コラム(テキスト一般) | comments(2) | trackbacks(0)
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コメント
>しん
 そっか・・・私はそういう経験ないから(幸せなんだろうけど)しんよりも妹の気持ち分かってあげられきれてない気がするわ・・・やっぱ体験したのとしてないのじゃ全然違うんだろうね。
 モデルになってアメリカにまで行く友達がいるのがそもそも珍しいから、(危険も伴いそうだし^^;)死ぬ人が多いのも仕方ない気がする・・・(・∀・;)世界に広く接してると必然的にそういう悲しい事件に出会うきっかけも増えそうだしね・・・
2004/12/08 10:29 PM by 奈々
 自分も交通事故で古い友人をなくしているので、少しだけですが気持ちがわかるような気がします。
 つらい記憶ですが、これからも前向きにがんばってほしいなぁとおもってるです。
 というか、俺の周り死ぬひとがおおいような・・・。中学の友人はモデルになってアメリカにわたったけど、原因不明の突然死だし・・・。(薬って話ですが)
2004/12/05 9:53 PM by しん
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