みずがらす
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【テキスト】リアル童話
「また靴替えた?」
 ジミ男が半ば呆れた様に、指に挟んだタバコで足元を指差した。返事の代わりにギロリと睨むと、奴はもうソッポを向いて次の思考を開始している。同じ事を5分と考えていられない。自分が言い出したことは3秒で忘れる。
「金無い?」
 恐喝ぎみに凄んで見せた。ジミ男は相変わらずジミなグレーのカットシャツにジミに端々が切れたジーパン姿で、ダルそうに流し目をキメてくる。金髪なのに存在感が皆無。だからジミ男だってのは言うに及ばず。
「君さ、昨日親から貰ったんじゃないの?その、お金をさ」
「貰ったんじゃねぇよ。"ポケットから落ちたのを拾った"の」
「君んとこは、親がお札を"落とす"んだ?」
「札は束じゃなきゃ意味ねぇだろうが」
「君、目つきが悪いよ。その癖直せば」
 話を逸らすのがジミ男の得意技。否、隠し技。大抵はコッチが気付かない。
「っるせぇハゲ。テメーこそ少しは男らしくしたらどうだ」
「ジミーは影だけ、煙草の煙にも紛れます」
 言いながら奴はくゆらせたメンソールを空に向かってくるくると回す。
 そうやって得意そうに銘打つジミ男は、またもや話の趣旨を煙に巻いた。
 しかし金が無いのは深刻な問題だ。入学費という名目でせびった金は、既に新品のファション用品(勿論我が家の決めた厳格な学校の入学式には相応しくない)に泡と消えている。ジミ男は元々金持ちだから、苦しい時はこうしてつるんで食費を奢らせるのだが、今回ばかりは奴にも頼めない程の大金だった。貰う金は良くとも借金はしない主義だ。
「大体君はね、贅沢し過ぎなの。質素倹約、ママさんが泣いてるよ」
「おお、どの口がそんな偉そうなお言葉を?」
「この歩く財布がで御座いますよ、陛下」
 コイツは自分が金づるにされてるのを知りながらこうしてついてくる。友達がいないのだ。・・・まぁそれはこちらにも言える事だが。
「テメ、馬鹿にしてんだろマジで」
「それが財布に向かって言う言葉ですかな?没落皇帝殿」
「お前みたいな奴はな、肥溜めに落ちて死ねばいいんだ死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「言い勝ちの高名ですな、参った」
 奴は時々こう訳のわからないことを言って降参をする。本当に負けたとは微塵も思ってないのだが。恐らくこの話題が5分を過ぎたって事だろう。
 道端にしゃがみ込み、あてもない会話を続けているのが好きだった。両親はとりわけ躾に厳しくて、こんな格好を見られたら恐らく卒倒するだろう、根は実に穏やかなんだ。親不孝者だとは言えど、プレッシャーとストレスの溜まるあの家は確実にこの細胞を殺していく。それ故このジミ男との「息抜き」は、もはや慣習化していた。何だかんだ言って、この奔放な男との付き合いは一番楽だ。
「で、何がヤバイのさ?」
「まぁなんとかなるべ」
 入学式は両親も来ないから大丈夫だろう。持ち合わせで何とかすることにした。なるようになれってね。コイツといると気楽になれる。
 そんな風にしてダラダラと時間を潰していた時だった。
「おや、こんな所で何をしているのです?」
 ふと目をあげると、いかにも貧乏っちい出で立ちの、乞食の爺さんが目の前に立って我々を見下ろしていた。60代前半くらいか?頭がやられてるのだろうか、気持ちワルイ視線でニヤニヤと笑っている。それになんか臭い。
「んだよジジイ。キモイから失せろ」
「何の用?お爺さん」
 自分より、冷静に言い放ったジミ男の方が迫力がある。実はジミーは強面なのだ。煙草は既に足の下だった。
「いや、あなたにちょっと」
 ジジイが自分を指差す。こんな乞食に関わりあった覚えはないが。ひょっとしてこの間のオヤジ狩りの復讐か?と思ってちょっと身構えた。
「学校はどうしました?」
「ハァ?関係あんのかお前に」
「いや、関係はありませんが・・・この時間は学生の方は」
「だから何だ。ボコされてぇのかテメェ」
 息巻いて立ち上がったら、ジミ男が不意に上着の裾を掴んでそれを制した。驚いて振り向くと、いつになく真剣な顔をしている。こいつはヤバいから関わるなということだ。ヤツの勘は良く当たる。
「逃げよう」
 ジミ男が野生の勘を働かせて立ち上がり、ダッシュした。見覚えのある奴なのか?しかし奴は人の顔など覚えていたためしがない。何しろ5秒で忘れるんだから。ただし逃げ足はもっと速いから、ここは従ったほうがいいと思った。
「ウゼーんだよ!!!消えろ糞ジジイ!!!!」
 声を限りに罵声を浴びせかけて、ジミ男の後に続いた。
「待ちなさい」
 ジジイが背中の後ろで何か言う。聞き取りにくい。もごもごと呪文の様に口の中で呟いている。うは、キモい。
「そいつの言う事を聞くな!」
 瞬間、ジミ男が覆い被せるように大声で命令する。何がなんだか分からない。ジミ男のこんな大きい怒声を聞いたのは初めてだった。とにかく必死で逃げる。
「もう遅い。その者には届いている」
 ジジイの声が、やけに近くで聞こえた。耳の中に入り込んで話しかけてるみたいな、うわんうわん響く声が轟いた。急ブレーキをかけて振り返るジミ男は、何か危険な結果を察知し終えたような蒼白顔でアタシを見る。
 不意に足がもつれて、昨日買ったばかりのエナメルの靴が宙に浮き、コントロールが効かなくなった。下を見ると、幾人もの血液が染み込んだような呪いの色が、その足元を妖しく彩っていた。
「いやあ、何これ!!!???」
「さあ靴よ、踊り出せ!その魂が尽きるまで!!!」


赤いくつ
赤いくつ
アンデルセン, 福島 宏之, 杉本 幸子
02:00 | リアル童話(テキスト) | comments(0) | trackbacks(6)
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2007/06/05 7:42 PM
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2007/05/25 11:33 PM
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2007/05/14 12:15 AM
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2007/04/29 6:57 AM
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2007/03/24 12:51 PM
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